ホームベーカリー観察日記

自動パン焼き器

先日、ホームベーカリーが届いた。早速、材料を買いそろえて、マニュアルどおりに食パンを焼いてみる。

以上の材料を投入して、スタートボタンを押すと、3時間50分後には立派な食パン1斤が焼き上がる。

ホームベーカリーを購入したのだからパンが焼けるのは当然なのだが、焼きたて、アツアツを食べた時の美味しさには、予想外に感動した!

思えば、焼きたてパン屋さん全盛の今時であっても、焼き上がり5分以内のアツアツ食パンをフハフハ言いながら食べる機会というのは、そうそうないことのように思う。耳はパリッとして、中はふわふわ&もっちりの食感。柔らか過ぎて、いつもの見慣れたoo枚切りにうまくカットするのは至難の業で、とにかくブロック状でもいいから、なるべく潰れないように切り分けて即食べる。美味い!酵母の香りも漂い、何だか麦の味も感じる気がする。何も付けなくても、美味いと感じて食が進む。

観察

ホームベーカリーの魅力は、この焼きたてアツアツが味わえることだと思った。今まで、家でパンを焼くという発想は無かった。パンを焼くまでの正確な材料も手順もちゃんと知らなかった...。昔、家庭科で小麦粉はダマにならないように水を少しずつ加えて練り上げましょうとか、イーストを混ぜたら30度(適当な記憶)のぬるま湯で数時間発酵させましょうとか、断片的な曖昧な知識はあるのだけど、多分、そんな知識でやってみても、たいしたパンは焼けないだろうと考えていた。(実際、イーストを発酵させる工程はデリケートな温度管理が必要で、多分ここで失敗すると思う。)

しかし、ホームベーカリーという機械は、そうゆう諸々の課題をクリアして、立派なパンを焼き上げる。すごい奴だと思った。何故、自分に出来ないことを、機械であるお前が立派にやり遂げるのか?スタートボタンを押した直後から、ベーカリー君の動きを随時観察してみた。

  • ダマになることも恐れずに投入した材料を捏ね始める。
  • 途中、リズム変化はあるものの、ひたすら捏ね続ける。
  • 途中、材料が内釜の周囲に若干付着していたりするのだが、おかまいなしに捏ね続ける。
  • 途中、材料が丸くなってくると、へらと一緒に空回りしてしまう気もするのだが、それでも捏ね続ける。
  • そして、発酵過程が始まる。若干保温し始めたようなので蓋を閉める。
  • ある時間経過すると、再び捏ねる。(多分ガス抜き?)
  • その後、再び、発酵させているようだ。
  • 最後は焼き上げ。覗き窓から見えている白い生地は、こんがりきつね色になってくる。
  • ピーとブザーが鳴って、終了。

所感

むむむ、一連の動きを観察したが、それほど難しい技は使っていないように思う。むしろ、個々の動きは自分がやった方が上手なはず。自分だったら、周囲に付着した材料も最初から大きな固まりの生地に取り込んで、もっと綺麗に捏ねることができる。また、パン職人の捏ね方なんか見ていると、延ばしたり、捻ったり、叩いたり、素晴らしい捏ね技を披露してくれる。見よう見まねなら、自分でもベーカリー君よりは上手く捏ねられそう。

それでも、最後にベーカリー君が焼き上げた食パンは、とっても美味しい。ベーカリー君の勝利である。個々の動作はぎこちなくとも、必要最小限の要求は満たしており、それらを連携させて、最後に立派な成果物を提供する。人間がやると、おそらく、発酵や焼き上げの温度管理・時間で失敗するのだと思う。捏ねの作業というのはそれほど重要でなく、パン作りのメインは、酵母と友達になって、上手な発酵、上手な焼き上げなのだと思う。そうゆう、物理的な動作を必要としないことを、ベーカリー君はセンサーやタイマーでしっかり見張ってやっているんだと思う。そして、苦手な捏ね作業も、疲れ知らずに地道に続けることで何とかクリアしている。

では、パン職人が家でパンを焼いたらどうか?それはもちろん、パン職人が焼いたパンの方が美味しいのだろう。(今のところ)しかし、焼きたて5分以内のアツアツ食パンを食べようと思ったら、自分がパン職人になるか、パン職人の友達の家でご馳走になる等しないと、実現するのは難しい。(パン職人の部分は料理上手なアマチュアでもOKかもしれないが)ベーカリー君なら、焼きたてアツアツパンというピンポイントな美味しさを、自分の都合に合わせて、いつでも提供してくれる。

また、如何にパン作りの達人であっても、パンを焼き上げるまでにそれ相応の手間がかかることは避けられない。自分のために焼く一斤だけにかける手間としては、かなりのコストである。一方、ベーカリー君なら材料をセットするだけという最小限の手軽さで実現できている。もはや炊飯器の感覚でタイマーをセットして、パンが焼き上がるのである。それは十分魅力的で、そして相当に美味しい。

パンの記憶

自分の中で最も古いパンの記憶を辿ってみると、小学校の運動会や遠足で食べた卵サンドを思い出す。ごく普通の卵サンドだと思うのだが、妙にうまかった記憶が残っている。中学では、土曜と水曜の昼食にはパンを食べていた。その頃の流行は、フルーツサンドだった。生クリームとイチゴやみかんがサンドされたやつ。今はそれほど魅力を感じないが、その頃は一押しのサンドイッチで、いつも最後にデザード感覚で食べていた。その頃まで、パンと言えば山崎パンで、工場で製造された様々な菓子パンや、食パンであればOO枚切りの1斤を買ってくるのが普通だったと思う。

その後は、焼きたてパン屋さんが台頭してくる。家の近所にも一軒開店して、その美味しさに結構ハマった。焼き上がりの時間というのがあって、その時間に出向くと大抵、ほかほかの焼きたてが買える。あるとき、焼きたての食パンを食べてみたいと思った。焼き上がりの時間に行って、食パンを4枚切りで1斤欲しいと伝えた。しかし、パン屋さんから返ってきた答えは、今は焼きたてで、柔らか過ぎてカットすることが出来ないとのこと。目の前には3斤分の長ーい1本の棒状の食パンが、確かに焼き上がっている。でも、柔らか過ぎて切ることが出来ない...。エーイ、ならば一本買いだ!ということで、1本=3斤買ってしまった。

持ち手のある細長い袋に入れてもらったが、確かに非常に柔らかく、持ち手の部分を持ったのではせっかくのパンがぐにゃっと変形してしまう。そこで、自分の両腕を台になるように広げて、そこにほかほかの食パン1本を載せてもらい、落とさないように注意深く家まで持ち帰った。家の包丁で切ってみると、確かに柔らかく、スライスする時に潰れ気味になる。それでも、焼きたての食パンの味は格別であった。食パンとはこんなにも美味かったのか!と感動した。

それまではパンの耳は固く、顎が疲れるだけの代物で、好きではなかった。でも、焼きたての耳は香ばしくて、それほど固さも感じず、逆に美味しい。そして、内側の白い部分はさらに美味い。中は熱々で、カット面からは湯気が立ち上る。ほのかに酵母が放つと思われる香りも食欲を誘う。食べてみると、しっとり・ふわふわだけど、噛むと粘りがあって、噛みごたえもある。気付くと、たぶん一人で1斤分くらいは完食していた。バターとかジャムとかそんなものは不要で、ただただ、パンが美味いと思いながら食が進んだ結果だ。その後、食パン3斤買いには結構ハマって、何度も繰り返した。カットすると落とされてしまう両側の耳の部分も付属するので、お得感もあったし。

何も足さない美味しさ

ご飯やパン・うどんなど、主食となる炭水化物は、本来、相当な美味さを持った食材なのかもしれない。食パンの美味さは上記に書いたとおり。その他...

  • 炊きたての香りと、熱々の湯気が立つ、ご飯。今時の炊飯器の性能ならきっと美味しいに違いない、と想像できる。
  • 讃岐うどんに代表される、腰の強いうどん。はっきり言って、だし汁さえ無くても、茹であげ直後の麺は美味いと思う。
  • 田舎で、薪で湯を沸かして、餅米を蒸すから始めるつきたての餅。木の蒸篭の香りや、餅米自体の香り、甘さで、なんの味付けがなくとも、相当美味しい。
  • いつの頃か、どこかの花と緑の博覧会で、来日したインド人が大きな壺に炭を入れて、目の前でパタパタ練ってからの焼きたて熱々のナンとカレーを出す露店があった。ナン初体験で、ナンなんだこの美味さは!と感動した。もちろんカレーも美味かったが、ナンだけでも十分満足できてしまう。

炊きたてご飯屋さん

焼きたてパン屋さんは多いが、炊きたてご飯屋さんはあまり見ない。炊きたてご飯屋さんとは、強いて言えば、おにぎり屋さんになるのだと思うが、美味しいおにぎり屋さんがあるから、敢えてそこでおにぎりを買うという経験はほとんどない。何故かと考えてみると、

  • 日本人は昔からご飯を炊く名人で、炊きたてアツアツご飯をいつも食べていたから、それで満足していた。
  • 今なら、世界最高の炊飯器がごく一般に出回っていて、世界最高品質の国産米を、相当な美味しさで手軽に炊き上げられる。

だから商売にならない?そうゆう自分たちは、昔から相当恵まれたご飯環境にいたのだと思った。

初めて海外旅行に行ったのは、アメリカ西海岸ツアーだった。1週間旅して感じたのは、なんの味付けも無い、炊きたての白いご飯が食べたいと思ったこと。あちらの国では、ご飯は主食でなく、サラダ感覚なのかもしれない。白いご飯というのは皆無(今は日本食ブームで状況は変わっていると思うが)で、必ず味が付いていた。そして、たとえ白いご飯を食べたとしても、満足できなかった可能性はある。日本ブランドの米じゃないので。

あると便利な道具

ホームベーカリーでパンを焼く時、人間側の作業で重要なのは、最初に材料を正確に計量してセットするまで。それさえ出来てしまえば、あとはホームベーカリー側の作業なのでお任せするしかない。慣れないうちは、レシピどおりに、とにかく正確に計量することが大事だと思う。最初は、昔からあったバネ秤を使っていたが、量る時に容器や紙の重さを考慮する必要があるので、間違い易い。針が目盛を指すとアナログ式なので、少しズレても、まあいいか、という甘えも出てくる。そこでデジタル式の秤を購入してみた。

この使い勝手が素晴らしく良い。一番良い点は、容器を載せたまま、何度でも0リセットできること。

  • 最初に空っぽのベーカリー内釜を載せて0リセット。
  • 重さを確認しながら、水を190ml入れて0リセット。
  • 重さを確認しながら、強力粉を280g入れて0リセット。

こんな風に秤に載せたまま、必要な材料を次々と0リセットしながら、ベーカリー内釜に直接投入していけるのだ。もちろん、暗算で加算していけば、0リセットの必要さえないのだけど、自分の能力では、間違い易い状況になることは確実。実際、1度間違って、1斤分の生地を無駄にしてしまった...。0リセット機能があれば、どんなに頭がボケボケの時でも正確にセットできそうだ。必須アイテムの一つだと思う。

包丁

それから、焼き上がった直後のパンは、外のパリッとした固さに比べて、中が非常に柔らかい。普通の包丁だと切り込みを入れる時の抵抗と、前後に引く時の摩擦で、かなり押し潰しながら切る結果になってしまう。せっかく美味しく焼き上がっても、上手にカットできないことがストレスになってしまう...。そこで、パン専用の包丁もあったほうが実際便利だと思う。カットしたパンもより美味しそうに見えるし。


ちなみに、スケーター 食パンカットガイド SCG1 本体ABS樹脂。包丁ガイドーポリエチレン 日本 ASYC701なるものも見つけたが、これは未購入。自分の場合、焼きたて食パンはスライスにこだわらず、超厚切り、ブロック状にカットして食べる方が好み。一生懸命、6枚切りにする必要性を感じなかったので。

比較検討

最終的にパナソニック SD-BMS101とMK HBH-100で、どちらにするか散々迷った。

自動投入について
  • 自分の感覚として、自動という言葉に弱い。自動と自動でないものがあると、自動の方がより優れているように思ってしまう。
  • パナソニック SD-BMS101には、ドライイーストとレーズンなどの具材を入れる専用ケースがあって、そこに入れておくと、最適なタイミングで生地に自動投入してくれる。
  • 一方のMK HBH-100は自動投入の機能はない。じゃあどうするかと言うと、最初から生地に混ぜ込んでしまう。えっ、それでいいんだ、という驚きがあった。
  • それでは何のために、パナソニック SD-BMS101には自動投入機能が付いているのかと思ったら、その方がよりベストな焼き上がりになるから、らしい。
  • 参考ページの中で、日経トレンディネットの比較記事を読むと、確かに数値的にはパナソニック SD-BMS101がパンとしてベストな膨らみ方をしているようだ。
  • でも、一般の人に試食してもらった人気は、MK HBH-100も決して劣るどころか、No.1になっている。(ちょっと記事が古くて、現在の最新機種でないのが気になるが)
  • その試食で、最高のA評価を得たMKの後継機種なら、問題なくきっと美味しいだろうと想像した。
  • また、実際に宿でお客さんに焼きたてパンを出しているご主人曰く、その宿ではMKのパンが一番人気らしい。
  • やはり数値よりも、実際に多くの人が感じる感覚を重視すると、MK HBH-100が良さそうな気がして来た。
  • もう一つ気になるのは、ドライイーストを最初から生地に混ぜてしまうと、タイマー予約した時は発酵時間をコントロールできなくて問題はないかということ。
  • しかし、その問題もMKは実にシンプルな方法で解決している。
  • 最初に水を入れて、その後小麦粉等のドライイースト以外の材料を入れる。最後に、山盛りになった小麦粉の山頂を少し凹ませて、そこにドライイーストを入れておく。
  • 小麦粉は水と分離して乾燥した状態を保つので、ドライイーストも乾燥したままで、こね行程が始まるまでは発酵が始まることはない。
  • なんと、ロシアは鉛筆を使った的発想だ!たったこれだけの運用上の手順で問題解決。
  • 実際、MK HBH-100でタイマー予約して、その焼き上がりに不満を感じたことはない。
  • 具材についても、MKは投入するタイミングでブザーが鳴る。しかし、タイマーをセットした時に、夜中にブザーが鳴って起こされても困る。
  • そんな時は、最初から具材も(レーズン等なら)投入してしまえば良いと言う考えもある。(溶けて問題のあるチョコ等は無理かもしれないが)

複雑な機械は故障し易い。同じ目的なら、より単純な仕組みで達成できる機械の方が優れている。

覗き窓について
  • また、MKには釜の内部が見える覗き窓が付いている。パナソニックは、その部分が投入ケースなので覗き窓は無し。
  • 小さくて決してよく見えるとは言えないが、それでもまったく見えないよりは、内部の様子が分かって安心感がある。
  • 一回だけ、材料の計量を間違えたことがあった。水の量が多過ぎたのだ。
  • その時、覗き窓からいつもと違う状態の生地が見えたので、これはおかしいと気付いて、最初の20分で中止を決断できた。
  • もし状態がまったく分からなかったら、そのまま3時間50分後に無惨なパンの状態を見て、丸々4時間近くを無駄にしていただろう。

現状はMKで十分満足している。しかし、機会があれば是非、最新のパナソニック SD-BMS101のパンも試食してみたいと、いつも思っている。


とりあえずは、良い買い物をした!