幼児から学ぶ「あけましておめでとうございます」の使い方

「あけましておめでとうございます」この言葉は、日本人なら誰もが、新年の挨拶に使っている。しかし、「あけましておめでとうございます」を覚えたての幼児に、正しい使い方を教えるのは、予想外に苦労する。大人になってしまうと、新年の挨拶に正しい使い方なんてあるのか?と思うかもしれないが、タイミングを誤ると恥ずかしいこと必至。自分が正しいと思う使い方を幼児に教えてみた。

12/31、自宅にて

  • 自分:「お正月におじいちゃんの家に行ったら、『あけましておめでとうございます』って挨拶するんだよ」
  • 幼児:「うん、わかった。でも、今日はお正月じゃない?いつがお正月?」
  • 自分:「ごめん、ごめん。お正月は1月1日からだよ。今日は12月31日で今年最後の日だから、今日の夜寝て、朝起きたらお正月だよ」


お正月には「あけましておめでとうございます」と挨拶する。

1/1、おじいちゃんの家にて

  • 幼児:「あけましておめでとうございます!」
  • 祖父:「あけましておめでとう、はい、よくできました、お年玉だよ」
  • 幼児:「ありがとう!」


果たして、幼児は正しい「あけましておめでとうございます」を修得したかに見えたが...

1/2、おじいちゃんの家にて

  • 幼児:「あけましておめでとうございます!」
  • 一同:「...。わははは(笑)」
  • 幼児:「???」
  • 自分:「ごめん、ごめん。『あけましておめでとうございます』はお正月に一回言えばいいんだよ。おじいちゃんには昨日挨拶したからね、今日は普通に『おはようございます』とか『こんにちは』だけでいいんだ」
  • 自分:「でも、今日はこれから伯父さんが来るからね、伯父さんにはまだ挨拶してないでしょ。だから、伯父さんには『あけましておめでとうございます』って言うんだよ」
  • 幼児:「うん、わかった」


一回だけ言えばいい、という条件が必要なのであった。

1/2、伯父さん登場

  • 幼児:「あけましておめでとうございます!」
  • 伯父:「あけましておめでとうございます、はい、よくできました、お年玉だよ」
  • 幼児:「ありがとう!」

1/4、近所の公園に向かう途中

  • 近所の方:「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
  • 自分  :「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
  • 幼児  :「どうして『あけましておめでとうございます』って言ったの?お家の外でも言うの?」
  • 自分  :「○○さんには今年初めて会ったからね。お家の外でも、知っている人に会ったら『あけましておめでとうございます』って挨拶するんだよ。」
  • 幼児  :「じゃあ公園に○○くんがいたら『あけましておめでとうございます』っていうの?」
  • 自分  :「そうだよ、ちゃんと挨拶するんだよ。でも、友達同士だったら『あけましておめでとう』までで大丈夫。『ございます』は丁寧に言う時に使う言葉なんだ」
  • 自分  :「大人に言う時は『あけましておめでとうございます』まで言った方がいいね」
  • 幼児  :「公園にいる人みんなに言わないといけないの?」
  • 自分  :「知っている人だけでいいんだよ」


家の外でも、知っている人には『あけまして...』の挨拶をするよ。大人には『あけましておめでとうございます』友達には『あけましておめでとう』でOK。

1/4、公園の帰り道にて

  • 自分  :「こんちには。今年もよろしくお願いします」
  • 近所の方:「こんちには。今年もよろしくお願いします」
  • 幼児  :「今はどうして『あけましておめでとうございます』って言わなかったの?」
  • 自分  :「○○さんは今年喪中なんだよ」
  • 幼児  :「もちゅうって何?」
  • 自分  :「家族の中で不幸があった時は、一年間は喪中という期間になるんだよ。家族というのは、一緒に住んでいる人や、おじいちゃんやおばあちゃんのことだよ。不幸というのは、家族の誰かが亡くなった、死んでしまった、ということだよ。そんな悲しいことが起こった時は『おめでとう』なんて気持ちになれないよね。だから喪中の人には言わないようにするんだ」
  • 幼児  :「どうして『もちゅう』って知っているの?」
  • 自分  :「去年、おじいちゃんがお葬式に参列していたからね、そうゆうことはちゃんと覚えておかないといけないんだ」


喪中の人には『あけまして...』の挨拶はしない。

1/8、幼稚園の始まりに向けて

  • 自分:「幼稚園が始まったら、先生には今年初めて会うよね?だから、朝、幼稚園に行ったら『あけましておめでとうございます』って言うんだよ。それから、お友達には『あけましておめでとう』だったよね」
  • 幼児:「うん、わかった。でも体操の先生はいないけど、言わなくていいの?」
  • 自分:「体操の先生は火曜日と金曜日の体操クラブの日に来るんだったよね?そしたら10日の金曜日に来るはずだから、その時に『あけましておめでとうございます』って言うんだよ」

上記会話を横で聞いていた少年からの質問

  • 少年:「オレは朝の会でみんなで一緒に『あけましておめでとうございます』を言うから、ひとり一人に言わなくてもいいんだよね?」
  • 自分:「その前に先生には『あけましておめでとうございます』って言っておいた方がいいよ」
  • 少年:「先生は職員室に居るんだけど、職員室に行ったら全部の先生に言わないといけないの?」
  • 自分:「職員室までは行かなくてもいいよ。朝の会の前に担任の先生が教室に入って来るでしょ、その時に言えばいいんだ」
  • 少年:「先生と廊下で会った時は言わなくていいの?」
  • 自分:「廊下で会ったら、廊下で『あけましておめでとうございます』を言うんだよ。とにかく、今年初めて会った人には、その時、その場所で挨拶するのが礼儀なんだ」
  • 自分:「クラスの友達(35名)にも、ひとり一人に言う必要はないけど、朝の会の前に友達と話をする時には『あけましておめでとう』を言った方がいいよ。そうそう、好きな女の子がいたら、その子にも言っておいた方がいいかもね(笑)」


今年初めて会った人には、その時、その場所で挨拶する。

いつまで挨拶するのか?

  • 少年:「いつまで『あけましておめでとうございます』を言わなくちゃいけないの?」
  • 自分:「1月の3日までは、日本全国、必ず『あけましておめでとうございます』の挨拶をしているよ。その後も、学校や会社が始まってから2、3日は、初めて会う人、話す人には挨拶している。大抵は1月の15日くらいまでは言ってるよね。場合によっては、1月の31日でも『あけまして...』の挨拶をしても悪くないよ」
  • 自分:「でも1月も中旬になると、ほとんどの人に挨拶してしまうし、今年初めてかどうかも、あやふやになってくる。そうやって『あけまして...』の挨拶は減ってきて、2月になったら、もう言わないかな」


1月中は『あけまして...』の挨拶OK。2月になったら、もう言わない。

電話・メール・年賀状での挨拶

  • 通話中の自分:「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
  • 横で聞く少年:「電話でも『あけましておめでとうございます』って言うの?」
  • 自分    :「そうそう、電話であっても、今年初めて話す人には『あけまして...』の挨拶をするんだ」
  • 自分    :「電話だけでなく、パソコンやiPhoneのメールでも挨拶するし、年賀状や手紙で挨拶することもあるよ」
  • 少年    :「同じ人に電話やメールで何度も挨拶しなくちゃいけないの?」
  • 自分    :「基本的には1回だけ『あけまして...』の挨拶をすればいいんだよ。実際に会って『あけまして...』の挨拶をした人には、その後の電話やメールでは『あけまして...』は言う必要はないよ」
  • 自分    :「でも逆に、電話やメール・年賀状で挨拶していても、実際に会った時にもう一度『あけまして...』の挨拶をすることはよくあるよ」
  • 少年    :「どうして実際に会った時だけ、何度も挨拶するの?」
  • 自分    :「正確な所はよく分からないけど、きっと、実際に会って挨拶するのが正式で、電話やメール・年賀状での挨拶は略式と考えられているからかもしれないね。みんなが正式な挨拶をしたいって思っているから、自然とそうなるんじゃないかな?」


電話やメール・年賀状で挨拶しても、実際に会った時はもう一度、挨拶することがよくある。

所感

  • 知識0の幼児に「あけましておめでとうございます」の使い方を正確に教えるのは、とても難しい。
  • たぶん、今年一回ですべてを理解したとはとても思えず、これから毎年教えていく必要がありそう。
  • 言葉というのは、その裏にある数々の前提条件の上に成り立っている。
  • その前提条件を知らずに言葉を使ってしまうと恥ずかしいことになる。
  • 前提条件を知らない幼児に正確に教えようとすることで、実は自分が学ぶことになってしまった。
  • 上記の使い方は自分の中の感覚であり、世間の常識と言えるかどうかは、ちょっと自信がない。

思い出

  • MacOS9までの頃、Macを起動する時、正月三が日には「謹賀新年」、誕生日には「Happy Birthday」と表示された記憶がある。
  • カレンダーの日付をチェックしているだけなのかもしれないが、そんな演出がOSに人間らしさを感じさせてくれて、当時は感動した。
  • 最近のMacBookでは、起動することはほとんどなくなり、もっぱらスリープとその解除の連続なってしまった。今でも「謹賀新年」は表示されるのだろうか?
  • ところで、AppleScriptで「あけましておめでとうございます」を通知するアプリは簡単に作れそう。
  • でも、幼児に教えたような正しい「あけましておめでとうございます」にするには、いくつもの条件を設定する必要があり、ちょっと大変。
  • 現実世界を正確にコーディングしようとすると、いつも面倒な条件が必要になる。
  • そんな面倒な条件で溢れた現実世界の言葉を、自然と修得してしまう幼児の学習能力は素晴らしい。