マイナス同士の掛け算はなぜプラスになるのか?
きっかけ
- そういえば掛け算にはそんなルールがあったな
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3×5の問題をいろいろな所で議論されているのを見ながら、自分は全く別の問題を思い出すことになった。
おもいで
遥か昔の記憶だが、学校で初めてマイナスの掛け算を習った時のこと。マイナス×マイナスがプラスになるという事実を知った時、何だか騙されたような感覚だった。
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- (-3)×3 = -9
- (-3)×2 = -6
- (-3)×1 = -3
- (-3)×0 = 0
- (-3)に対して掛ける数を1ずつ減らしていくと、答えは3ずつ増えている。
- この法則から予想すると、掛ける数が-1になると、答えは+3になる。
-
- (-3)×(-1) = 3
- だからマイナス×マイナスはプラスなのだと。
- このことに理由はなくて、数学の定義として覚えるようにと理解した気がする。
自分の頭の中
しかし、正直な自分の心は、皿に乗ったケーキを想像して混乱していた。
- 3×5 = 15 ...... 3+3+3+3+3 = 15と考えて理解できる。
- (-3)×5 = -15 ...... (-3)+(-3)+(-3)+(-3)+(-3) = -15と考えて理解できる。
- 3×(-5) = -15 ...... (-5)+(-5)+(-5) = -15と考えて理解できる。
- (-3)×(-5) = 15 ...... ??????
そう、掛ける数がマイナスという感覚が、どうにも理解できなかったのである。
当時は、そうゆうもんだと思い込むことにして、テストでは困らなかった。
そして、幾度となくマイナス同士の掛け算をこなしていくうちに、いつしかマイナス同士の掛け算はプラス、という疑いようのない知識になってしまった。
大学時代の悩み
時は流れて大学生になった頃、こんな自分でも家庭教師のアルバイトの口が見つかった。そこで先生と呼んでくれる中学生から質問されたのが、どうして(-1)×(-1) = 1 になるのかという疑問。
いい質問だ!
そして、その質問に正確に答えられない自分が居た...。中学以来、マイナス同士の掛け算がプラスになる理由をちゃんと理解していなかったツケが回ってきたのだ。
教える立場になって初めて、自分が本当にそのことを理解しているかどうか、気付かされる。教えることは、同時に教えられることでもある。
マイナスの感覚
- まずはマイナスを日常の感覚で理解しておく必要がある。
- 皿にのったケーキの個数を想像していては、永遠に理解できないと思った。
- 0個までなら何もない状態を想像できるが、-1個という概念は日常にはない感覚なのだから。
- それでは、日常的なマイナスの感覚とは何だろう?
- マイナスを違和感なく想像できるものを探してみた。
- 温度計の温度(水が凍り始める0度より低いとマイナスになる)
- 預金と借金(預金はプラス、借金はマイナスで表現される)
- 利益と損失(利益はプラス、損失はマイナスで表現される)
- 収入と支出(収入はプラス、支出はマイナスで表現される)
- 増加と減少(増加はプラス、減少はマイナスで表現される)
- 足し算と引き算(足し算はプラス、引き算はマイナスで表現される)
- 過去と未来(10分後の未来はプラス10分、10分前の過去はマイナス10分と考えられる)
- 前進と後退(365歩のマーチで3歩進んで2歩下がるのは、+3歩-2歩 = +1歩 と考えられる)
- こうして見ると、マイナスは、プラスとは正反対の状態を表現しているようだ。
- 相反する状態を持たない現象に対しては、マイナスの状態を想像することはできない。
- だからケーキの個数でマイナスを考えてしまうと、いくら考えても理解できなくなる。
マイナスを掛ける実例
マイナスの感覚は大分掴めた。それでは、マイナスの状態を持つ現象同士なら何でも掛け算して大丈夫だろうか?マイナス同士の掛け算が、違和感なく感じられる事例を考えてみた。
ある家電売場では、平年より1度暖冬だと、その月の売上げが100万円落ちるという経験則がある。
- 今月は3度暖冬でした。売上げはどうなるか?
- 3×(-100) = -300 ...... 売上げが300万円減少する。
- 来月は逆に平年より3度低くなることが予想される。売上げはどうなるか?
- (-3)×(-100) = 300 ...... 売上げが300万円増加する。
トヨタの場合、1円円高が進むと300億円利益が減少するそうだ。
- 想定よりも5円円高になってしまった。利益はどうなるか?
- 5円×(-300億円) = -1500億円 ...... 利益が1500億円減少する。
- 想定よりも5円円安になってしまった。利益はどうなるか?
- (-5円)×(-300億円) = 1500億円 ...... 利益が1500億円増加する。
南北線は、時速40kmで運行している。
- 今、ちょうどA駅を北に向けて出発した。2時間後の位置は?
- 2時間×40km = 80km ...... A駅の北80kmの地点。
- A駅を出発する2時間前の位置は?
- (-2時間)×40km = -80km ...... A駅の南80kmの地点。
- A駅を南に向けて出発する電車がある。2時間前の位置は?
- (-2時間)×(-40km) = 80km ...... A駅の北80kmの地点。
比例関係
どうやら、以下の条件を満たす時に、マイナス同士の掛け算の意味が見えてくる。
- 二つの現象の間に何らかの比例関係が成り立っている。
- 二つの現象は、それぞれ相反する状態を持っている。
言葉でイメージする
- お小遣いの増加でお金は増える。(プラス×プラス=プラス)
- お小遣いの減少でお金は減る。(プラス×マイナス=マイナス)
- 無駄遣いの増加でお金は減る。(マイナス×プラス=マイナス)
- 無駄遣いの減少でお金は増える。(マイナス×マイナス=プラス)
- 目的地を向いて前進すれば、目的地に近付く。
- 目的地を向いて後退すれば、目的地は遠ざかる。
- 目的地とは反対を向いて前進すれば、目的地は遠ざかる。
- 目的地とは反対を向いて後退すれば、目的地に近付く。
マイナスを掛けるとは、ある状態を反対の性質にすること。
- 賛成意見に賛成、つまり賛成。
- 賛成意見に反対、つまり反対。
- 反対意見に賛成、つまり反対。
- 反対意見に反対、つまり賛成。
つまり、マイナス×マイナスは二重否定のような効果を生む。
- プラスの反対は、マイナス。
- 5×(-1) = -5
- マイナスの反対は、プラス。
- (-5)×(-1) = 5