顔面神経麻痺という病気

6/10(予兆)

この2、3日、首元周辺の肩こりが酷い。肩が凝り過ぎて、ぐっすり眠れない気がする。普段、肩こりとは無縁な体質なはずなのに、なぜだろう?

6/12(発症)

夜中にトイレに行った時に、顔に妙な違和感を感じる。でも、その時は単に寝ぼけているだけだろうと思って、そのまま寝た。
朝起きて、口をゆすごうとした時に、口元から水が漏れて「ブクブク、ペッ」がうまくできないことに気付く。あれ?
そして朝食を食べようとした時に、この違和感は気のせいではなく、決定的な異変だと気付き始める。

  • 口をうまく開けない。
  • 汁物を飲もうとすると、口元から溢れる。
  • 歯医者で麻酔された時のように、唇周辺にしびれを感じる。
  • 笑おうとすると、顔面が引きつる、こわばる。
  • 目が霞むと思って鏡を見ると、片方の目が瞬きできていない気がする。
  • 見てもらうと、両目を閉じようとしても、片側はうす目状態になって完全に閉じていないらしい。

一体、どうしてしまったんだ?顔の一部が自分のものでなくなってしまったような感覚。おかしい...。異常過ぎる...。というわけで、仕事前に医者に立ち寄ることにした。

このような人生初めての症状で、何科に行くべきかまったく見当もつかなかったので、とりあえず普段風邪を引いた時に行く、かかりつけの内科を受診してみた。

すると、その先生曰く...

  • 何らかの顔面神経麻痺であると。
  • ちゃんと調べた方がいいので、この地域の医療センター宛に紹介状を書きますと。
  • 今日これから行ける?(いや、今日はちょっとこの後予定が...)
  • それじゃ明日はどう?(調整してみます、よろしくお願いします)

6/13(発症2日)

医療センターで受診したのは耳鼻科。なぜ耳鼻科?と疑問満載だったのだが、昔から顔面神経麻痺は耳鼻科の範疇らしい。
まず、聴力検査を受けた。その結果は異常なし。CTなどは撮影しなかったのだけど、顔面麻痺の状態等から判断して、急性抹消性顔面神経麻痺と判断された。

中枢性麻痺と末梢性麻痺の鑑別の仕方
 *オデコにシワ寄せが出来るか否かによる鑑別

    麻痺側のオデコにしかシワ寄せが出来ないとき、出来ても弱いとき・・・末梢性

    両方のオデコにシワ寄せが左右対称にできるとき・・・中枢性

顔面神経麻痺
  • 急性とは、短期間に急激な変化を起こす症状であるということ。(反対語は慢性。症状は軽いが、長期間続く状態)
  • 末梢性とは、中枢性に対する言葉。中枢=脳と脊椎、末梢=中枢から枝分かれした神経。つまり、脳や脊椎の問題ではなく、部分的な顔面神経に問題がある麻痺であると。

医学的には「ベル麻痺」と呼ばれているらしい。顔面の片側の表情を作る筋肉を動かせなくなってしまう状態。

  • 自分の場合は、顔の左側半分の表情筋が動かなくなってしまった。
  • 左目を大きく見開くことも、ちゃんと閉じることもできない。まばたきもできない。
  • 顎・舌・声帯の筋肉はちゃんと動く。だから、食べられるし、しゃべれる。
    • 食べられるけれども、口元から溢れやすく、咀嚼したものが左頬に溜まる。(ハムスターみたいに)
    • しゃべれるけれども、「まみむめも」「ぱぴぷぺぽ」など唇を閉じてから発音する言葉を言い難い。
  • 感覚神経は正常、麻痺している側を触ると、触覚をちゃんと感じる。
  • 味覚も正常だった。麻痺している間も美味しく食べられたのは幸運。(人によっては味覚障害もあるようだ)

顔面神経は、内耳を通って、耳の後ろ辺りにある小さな穴=茎乳突孔(けいにゅうとつこう)から出て、顔面全体に広がっているらしい。ベル麻痺とは、この茎乳突孔付近の顔面神経の束が、何らかの原因によって腫れてしまい、表情を動かす指令が顔面に伝えられなくなっている状態だそうだ。
なぜ腫れてしまうのか、正確な原因は不明。特効薬も無し。但し、経験的にベル麻痺発症初期にステロイドを投与すると、一定の効果が見られることが知られているらしい。
発症後3カ月以内には7割が回復する。1年以内では9割が回復するらしい。
ベル麻痺の発症率は、10万人に対して20〜30人くらいが発症するらしい。(0.02〜0.03%)

以上の診断を受けて、プレドニンと呼ばれるステロイド剤を処方された。入院はせず、薬を飲む。2週間後に再診予約した。

プレドニンは、その飲み方が独特である。

  • 最初の4日間は、1日に6錠(朝3 夕3)、
  • 次の4日間は、1日に4錠(朝2 夕2)、
  • 次の3日間は、1日に2錠(朝1 夕1)、
  • 次の3日間は、1日に1錠(朝1)、

このように、最初にドカッと身体に入れて、その後徐々に量を減らしていく飲み方をするのだ。副作用を抑えるためにプレドニンの濃度管理が重要らしい。薬を飲むのを忘れやすい方なのだが、今回は決して忘れたくないと思い、iPhoneのリマインダーに登録しておいた。

麻痺の程度は、40点採点法で判定された。辛口で10点、甘く見て20点、とのこと。中程度の麻痺である。

  • 40点が麻痺なしの正常な状態。
  • 0点が完全麻痺のどうしようもない状態。

顔面麻痺の生活模様

  • 左側顔面は麻痺しているものの、それ以外は至って健康である。
    • 車の運転も制限されなかった。
    • アルコールの制限もされなかった。
  • 発症1日目は落ち込んでいたが、一晩寝て、もはや表情の善し悪しを気にする歳でもないと覚悟を決めた。
  • 顔面麻痺であることを理由に消極的になることはやめた。
    • 毎朝走り、いつもどおり仕事に行く。
    • 飲みに行ったり、旅行もして、みまもり携帯の契約もした。
  • 多くの場合、他人は自分の表情なんて、それほど気にしていない。
  • 但し、1対1でじっくり対話する必要がある時は、顔面神経麻痺であることを先に説明しておいた。
    • 左側の表情が出ないために、不機嫌であるとか、否定的であるとか、誤解されては困る場合もあるので。
  • まばたきできないこと、まぶたを閉じられないことは、予想以上に不便。
  • 頭や顔を洗った時に、石けんやシャンプーが目に入って、激しく染みる。
    • 最初は水泳のゴーグルをして洗髪などしていた。
    • 慣れてくると、頭の傾きで左目に入らないようにコントロールできるようになってきた。
  • 左目を細められないので、ちょっとしたことで眩しさを強く感じる。
    • 歩くとき、走るとき、車を運転する時にサングラスが手離せなくなった。
  • まばたきできないと、目が乾く。保湿用の目薬も手離せない。
    • たまに指を使って、手動で強制まばたきさせてみたりした。

6/27(発症後 2週間経過)

  • コツコツと毎日薬を飲んできたが、この2週間、顔面麻痺が改善する兆候は全く見られず。
    • と同時に、逆に悪化することもなかった。
    • 結局、2週間前の麻痺の状態と何も変わっていない。
    • 40点採点法で、辛口10点、甘く見て20点も変化なし。
  • 本日は血液検査。プレドニンなどが身体に与えた影響を確認するためらしい。
    • 処方薬による悪い影響はまったく出ていないらしい。
  • プレドニンは長期間投与する薬ではないのだが、(通常は1ターン、2週間の投与で終了)
  • 顔面麻痺の改善が全く見られないので、追加で2ターン目のプレドニン投与となった。
    • 副作用も出ていないので、2ターン目も問題ないと判断された。
    • 改善してもしなくても、2ターン目で終了。3ターン目は無し。

7/4、5、6、7(発症後 3週間経過)

  • 昨日までまったく改善が見られなかったのだが、鏡の前で表情を確認してみると、左右の違いが多少改善されているように感じた!
    • しかし、その改善は若干である。もしかしたら、気のせいかもしれない...。
  • 気のせいかもしれないと思っていたが、翌日鏡を見てみると、さらに改善している気がした。
    • 感覚として、特に改善の兆候を感じている訳ではないのだが、少しずつ改善する方向に向かっているようだ。
  • さらに日数が経過すると、両頬に空気を入れて膨らませるようになった!
    • 油断すると空気が漏れるけど、両頬を膨らませることができるのは、大きな前進である。
    • 同様に歯磨きの時、油断すると水が漏れるけど、「ブクブク、ペッ」をできるようになった。


今ここ。