Retinaのほんとうの力

今までMacBook Pro Retinaについて語るとき、常にその基準は解像度とスクロールの滑らかさばかりに囚われていた。
そもそものRetina=網膜ディスプレイの名前の由来が、人間の目(網膜)が識別できる1画素の限界を超えたきめ細かさであるため、どのような曲線も決してギザギザにならずに滑らかに表現できるディスプレイ、と思っていた節がある。だから、離れて見れば大差ないとか、iPadRetina、非Retinaの差もそれほど感じないとか、そんな視点でばかり見つめていた。
その認識は間違っている訳ではないのだけど、MacBook Pro Retinaの魅力はそれだけではなかったのだ。もっと遥かに大事な観点が抜け落ちていたのだ!

それはである。

色の濃さ

Retinaの色は濃い!赤は深紅の赤であり、空はこんなに青かったのか!と感動する青であり、緑は新緑の生命の力を感じる緑になる。もちろん、白は眩しいくらいの純白で、黒は漆黒の黒である。(丸4年以上、ほぼ毎日酷使してきたMacBookと比べるものではないかもしれないが)それに比べてMacBookで見るすべての色はくすんで見えた。白は灰色に見え、黒には深みがない...。

  • MacBookしか使っていなかったこの6年間は、そのくすんだ色が自分の標準だった。その環境で写真を見て、感動して、十分満足していたのだ。
  • ところが、MacBook Pro Retinaを数日使い込んでからMacBookで作業すると、その違いに愕然とする。もう戻りたくない感じ。
  • 一度Retinaの色世界を知ってしまうと、後戻りできなくなる常習性がある。
  • 解像度については、ある程度離れて見ればMacBookでもそれほどの不満はない。
  • しかし、色の違いについては距離に関係なく常に感じる情報なのだ。強烈に違いを感じる。

カラーマネジメント

ここに一枚の写真がある。そう、Mountain Lionのデスクトップピクチャとして収録されている一躍有名になった*1写真である。

この写真の沼の色はどんな色に見えているだろうか?使い込んだ自分のMacBookで見ると、確実に緑が入った青緑色に見える。一方、MacBook Pro Retinaで見ると緑色は含まれない印象。もっと寒い感じのたたずむ(クールな)沼に見える。どちらの色に見えても、その写真を見て感動を得られればそれで良いのかもしれない。
でも、もし自分がその場にいたら、どちらの色に見えるのだろう?この写真を撮った方は、どちらの色を感じてシャッターを切ったのだろう?おそらく、この作者の方が見ているのは、ほとんど緑色の含まれない青い沼だと思う。なぜなら、作者のWebページを訪れると、色に対する世界最高のこだわりを感じるから。当然、カラーマネージメントは基本中の基本だと言っている。

一方、自分は恥ずかしながら、これまでずっとカラーマネジメントには無頓着だった。システム環境設定のカラー調整は実施したことがあるが、目視による自分の感覚で行う作業では、調整する度に微妙に色合いが変わっていた。つまり、完璧に調整されたディスプレイで本物の色と向き合ったことがなかったのだ。当然、MacBook Pro Retinaでも無調整のOSデフォルトのカラープロファイルで使っていた。
そこで、上記の写真家のページに感銘を受けて、それではMacBook Pro Retinaのカラー調整を真剣にしてみよう、と思い立って調べてみた。すると、意外な事実が分かってしまった!

素晴らしい!なんと、機器計測によるカラー調整を実施した結果、MacBook Pro Retinaではデフォルトのカラー特性とほとんど同じ結果であったと。つまり、自分は人生初、ほぼ完璧にカラー調整されたディスプレイを手に入れて、それを使っていたのだ!
同じ規格でカラー調整された環境では、写真の色は常に同じ色に見えるはず。だから、緑を含まない青い沼が見えていた、と想像したのだ。

色を楽しむ!

正確な色が見えている!そして何よりも目の前に映し出される写真の現実感が半端なく素晴らしい。そんな感動が増幅されてくると、とにかく素晴らしい写真をたくさん閲覧したくなる。居ても立ってもいられない感覚に襲われる。さっそくWebブラウズが始まった。


まずはデスクトップピクチャに採用された、白石さんの500pxページ。

  • http://500px.com/KentShiraishi
    • サムネイル画像のページを見ているだけで、素晴らしく気持ちの良い色を感じる。
    • なによりも最大解像度2880x1800で閲覧すると、ほぼ1ページに5行x4列のサムネイル画像が収まってしまう。
    • 一覧できる気持ち良さ、この見通しの良さはRetinaの特筆できる良さである。
    • それをMacBookでやろうと縮小を4回繰り返したが、それでも一覧するには高さが足りない...。(4回以上は縮小できなかった)


つぎはSIGMA DP2 Merrillの実写ギャラリー。

  • ちなみに、DP2 Merrillは三層構造のCMOSセンサーFoveonX3を持つ。
  • 1画素で赤・青・緑の3色を受光する。つまり、フィルムと同じ仕組み。
  • Merrillになって、そのCMOSサイズが一般的な一眼レフと同等なAPS-Cサイズへと巨大化した!
  • その他の一般的なCMOSセンサーは1画素では赤・青・緑のどれか1色しか受光できない。
  • もうちょっと詳しく言えば、一般的なCMOSセンサーは光の明暗情報しか検出できない。
  • だから、それぞれの画素ごとに赤・青・緑のどれか1色しか透過しないフィルターを付けて、色情報を検出している。
  • 1画素あたりでは、赤・青・緑のどれか1色の情報しか知らない訳である。
  • それをローパスフィルタを利用して、1画素に入光した光を周囲のセンサーに分散させ、
  • 良きに計らう計算処理によって、3色混ざった色情報に補完しているのである。
  • ローパスフィルタによって分散された光は、せっかくの焦点が合った状態をぼかしてしまう...。
  • DP2 Merrillの三層構造のCMOSセンサーFoveonX3なら、1画素で3色を感じるのでローパスフィルタは不要。
  • だから気持ち良く寸分の狂いもなくピントが合った写真を作り出す。
  • しかも1画素ごとが3色の色情報を持っているから補完が不要で、現実の色が再現されやすくなる。
  • 最高にくっきりとした、そして見たままの色情報が画面に現れるのだ。
  • そのような最高のフルカラー情報を持った写真を、
  • ほぼ完璧にカラー調整された、高解像度のRetinaディスプレイで鑑賞すると、
  • 目の前には、時が流れている日常では気付けなかった現実が現れる。
  • ゾクッとするような現実感を感じてしまうのだ!


比較にリコーGXRのページも閲覧してみた。

  • GXRも本体はコンパクトサイズでありながら、APS-CサイズのCMOSセンサー単焦点レンズを持つミラーレス一眼系のカメラである。
  • 自分が使っているのは28mm F2.5のレンズユニット。広角でありながら明るいレンズとAPS-CサイズのCMOSセンサーが創り出すボケは心地よい。
  • しかし、Retinaディスプレイに写し出される等倍表示の写真を見ると、DP2 Merrillに比べてわずかながらピントが甘い感触が残る。
  • RetinaディスプレイDP2 Merrillを知らなかったら十分満足な写真なんだけど、知ってしまった今、上には上があるもんだなと感じる。

例:人肌の質感を比べてみた。

    • やはり、ローパスフィルター無しのユニットの方がくっきりとした印象が強く出ている。
    • DP2 Merrillに至っては、産毛や毛穴の状態まで、普段は気付かない人間の生々しさまで表現される。


自分がGXRを購入するきっかけにもなったshio先生のshiologyのページ。

  • 日常を毎日スナップし続けるその写真は、すべてがキラキラ輝いて見える。
  • 写真はすべて手持ち撮影だそうだ。にもかかわらず、ブレもなく、常にドンピシャなピントの写真にはいつも惹き付けられる。
    • 呼吸を止め、心臓の鼓動までも感じながら、拍動が止まる瞬間を感じてシャッターを切るそうだ。
    • 風に揺れる草木を写すときは、揺れの周期を予測して、周期の上限・下限で止まった瞬間を写すそうだ。
    • そして、ピントは単純に合わせようとするのではなく、
    • 被写体のどこを狙ったときに最もピントが合った絵になるかを常に想像しながら撮影するそうである。
  • そうやって撮影されたGXRの写真は、同じカメラを使っているとは思えないほど心地よい写真になっている。

眺める角度

  • 以上の素晴らしい色合いのRetinaディスプレイは、上下左右にかなり体を動かして斜めの角度から見ても、色の変化がほとんどないのだ!
  • ところが、6年以上使ってきたMacBookでは、少し斜めの角度から見ただけで激しく色合いが変化していた。
    • 左右方向はまだしも、特に上下方向の角度の違いにはかなり悩まされた。
    • 写真を加工するときは、常にディスプレイに対して目線が垂直になるように心掛けていた。

それを思うと、Retinaディスプレイが許容する視野角の広さは驚異的である!

所感

もはやスクロールが滑らかでないとか、わめいている場合ではなくなった。Retinaディスプレイの向こう側には、こだわりの商業印刷の世界が広がっていたのである。
以前、ニコンD40のローパスフィルター上にカビが生えてしまった...。

その清掃をしてもらうために、ニコンのサービスセンターに足を運んだ。その待ち時間に入ったニコンギャラリーの展示写真が当然ながら素晴らしい。何気ない一枚の写真から、確かにその場の雰囲気が生々しく伝わってくる感触があるのだ。Retinaディスプレイには、そういった雰囲気伝える力がある。

  • ただし、展示方法やライト=光の当て方まで、こだわりの職人魂で緻密に計算されたギャラリーには及ばないかもしれないが。
  • 場の雰囲気を伝えるためには、こだわりを持った撮影者が、アウトプットまで責任を持った作品として仕上げる必要がある。
  • そして、こだわりを持ってカメラでRAW撮影して、MacBook Pro Retinaで見る限り、それが無意識のうちにできてしまうのである。
  • アップルストアに展示されるRetinaモデルには、そういったこだわりの写真をもっと入れておくべきである。
  • また、店舗に足を運んでRetinaの魅力を知るには、そういった写真のURLを検索して、ぜひ表示してみることお勧めである。

また一つ、新たな世界観が広がってしまった...。

*1:北海道美瑛に住む日本人の写真家の作品が採用されたから。そして、Appleに作者として名乗ることを公式に認められた世界初の写真家であるから。