シングルレバー混合水栓の水漏れ修理に見るノウハウ
キッチン蛇口の根元からの水漏れが酷い...。かれこれ数年前から水漏れは始まっていたのだが、今まで見ない振りをしていた。しかし、もはや無視できるレベルではなくなってしまった。一晩放っておくと、表面張力で広がった水はキッチンの作業台全面を覆い尽くし、水浸しにしてしまうのだ。数年来水浸しの蛇口の根元も、黒カビと水垢で汚らしい。
実は以前、水道屋さんに立ち会ってもらって見積を依頼したこともある。しかし、その後一向に音沙汰がない。(忘れてるのか?)こちらからも連絡することもなく、水漏れもそのままになってしまった。ならば自分で修理してみるか!と今頃思い立ったのであった。
以下はその作業記録メモ。
構造
- 毎日当り前のように使っている蛇口であるが、恥ずかしながら、その内部構造をよく分かっていなかった。
- 昔ながらのネジ式の蛇口なら、多少の知識はある。
- しかし、キッチンの蛇口はシングルレバー混合水栓タイプ。
- 一つのレバーで、上下に動かして水量を調節、左右に動かして湯温を調節するのだ。
- 直感的で分かり易いインタフェースとは裏腹に、その内部は完全にブラックボックスである。
- あの筒の中でどのように水と湯が混ざり、蛇口まで供給されるのか?
- 筒と一体になった左右に回転する蛇口の根元までの水の配管はどうなっているのか?
その疑問は、以下のページで理解できた。なるほど!
- 混合水栓のパッキン交換 - 素人木工ブリコラージュ(感謝です!)
ちなみに、ネジ式の蛇口の構造は以下のページで確認。
検索と購入
- 次に、シングルレバー混合栓の根元に製品番号らしき表示を発見した。
- その製品番号をキーにして、検索してみた。
km326n 水漏れ 修理
- すると、あっさりと以下のページがヒット!
- 恐るべし、現代の検索エンジンの検索力...。
- さらに、Xパッキンセットの製品番号 PZ213NPK をキーに検索してみると、専用工具であるPG26の存在も知る。
- 専用工具 PG26は、本体のネジを緩める際に、本体が供回りしてしまうのを防止する工具のようだ。
- 専用工具を使った方が作業は簡単、確実にできるはず。
- 即、Xパッキンセットと専用工具 PG26を一括購入した。
止水
- 作業前には、元栓を確実に止水しておく必要がある。
- 蛇口を全開にしても水が出ない状態にしておくのだ。
- そうしないと、水栓を分解した時に水が飛び散って、水浸しの酷いことになる。
- キッチン下の収納の奥のパネルを外すと、見慣れたネジ式の元栓が見つかった!
- 早速、時計回りに閉めようとしてみるが...
固い!
- 歯を食いしばって力を込めても、びくともしない...。
- どうにか水の元栓は締められたのだが、湯の元栓がいくらやっても動かない。
- 30分格闘したが動かず、諦めた...。(汗だく、かつ手痛)
- ならば給湯器の元栓を止めてしまおうと、外に出て元栓を閉めてみた。
- しかし、ちゃんと閉めているのに、なぜか湯だけは蛇口を開くとちょろちょろ流れて完全に止水できない。
- しょうがないので、家に入ってくる水道の元栓を閉めてしまった。これでようやく作業に入れる。
分解
- マイナスドライバーでレバー上部のキャップを外すと、ネジが見える。
- そのネジを外せば、レバーを上に引き抜ける。
- レバーが外れると、水栓上部が巨大な六角ネジになっている。
- この6角ネジを反時計回りの方向に緩めたいのだ。
しかし、これが一筋縄ではいかない...。
巨大ネジ
- まず、6角ネジは巨大であり、対向する辺の間隔は37mmもある。
- そんな巨大なレンチはないので、大型プライヤーで挟んでみるが、無理そう。
- 無理に回せば、ネジ山をなめてしまいそうなので、実家に工具を借りに行く。
- そして、物置の奥をガサゴソやって、ようやく見つけ出したのがこれ。
- この巨大工具を37mmの幅に合わせて、やっと巨大なネジを回せるようになった。
供回り防止
- 6角ネジを回すと、予想どおり水栓全体が供回りしてしまう。
- そこで専用工具の出番なのだが、使いこなすには工夫が必要だった。
- 専用工具は、突起を水栓の後にある穴に差し込んで、供回りをがっちり押さえる構造なのだが、
- 水栓と壁の間隔が狭く、壁が邪魔をして専用工具の突起を穴に差し込むことが出来ないのだ...。
http://item.rakuten.co.jp/kaitekimizu/pg26-1/?s-id=pc_srecommend_01
- そこで、あえて時計回りの締める方向に回して、水栓の穴が2時の位置になるまで水栓全体を供回りさせた。
- この位置なら専用工具を穴に差し込んで、水栓全体の供回りをがっちり押さえ込むことができる。
二人掛かり
- 左手は巨大スパナを反時計回りに、右手は専用工具を時計回りに、巨大なハサミを閉じるように動かそうとする。
- しかし、水栓はビクとも動かず、緩んでくれない。
- 緩める方向は何度も確認した。間違いないはず。
- こうなったら二人掛かりでやるしかない。助っ人を呼んで、二人掛かりで「いっせーのー、せっ!」息を合わせて力を込めると...
カクッ
- ようやく、水栓上部の巨大なネジが緩んだ!
- それさえ緩めば、あとは簡単に分解できる。
- カートリッジ・蛇口を取り外し、上下のパッキンを交換した。
- 古いパッキンを取り外すと、溝には水垢が溜まっていた。
- 歯ブラシで擦って、程々に清掃をしてから取り付けた。
- 蛇口の可動部上下に挟むワッシャーリングも交換した。
成果
- 無事、パッキンの交換を終え、元どおりに組み上げた。
- 元栓を開けて、水と湯がちゃんと出る・止まることを確認。
そして、肝心の水漏れは、止まった!
- 何時間経過しても、一滴のにじみもない。
- 水栓の根元は完全にドライ。気分がいい。
工具を揃える
- やはり、作業に最適な工具を利用することは、とっても大事。
- 今後のことを考えて、以下の工具を揃えた。(事前に用意すべきだった)
12〜46mm対応モンキーレンチ
- 不適切な工具を使ってしまうと、上記苦労の痕跡のようなダメージを部品に与えてしまう。
- もしこのレンチを使っていたなら、まったくの無傷で分解できたと思う。
- 余裕を持って46mmまで対応のモンキーレンチを選択した。
- このサイズなら、さらに巨大なトイレの配管用ナットまで簡単に回せた。
ノウハウ
- もし今なら、シングルレバー混合水栓のパッキン交換の所要時間は、15分程度で完了するだろう。
- しかし、この日記に書いた交換の作業時間は、トータル1時間半くらい。
-
- 水の元栓を閉めるのに苦労したり、
- 必要な工具を実家に借りに行ったり、
- 供回り防止の専用工具の突起を水栓の穴に差し込むのに苦労したり、
- どれも些細なコツなのだが、知っているのと知らないのでは大きな違いのある知識であった。
- WEB上で検索すれば、シングルレバー混合水栓の構造、パッキンの交換方法の解説はピンポイントな情報がヒットする。
- あとは作業するだけなのだが、その作業の基本となる肝心のネジを回す作業で苦戦することになったのだ。
- ネジを回すという作業は、必要な工具を使って、回したい方向に回すだけの単純な作業と思われがちだが、実は奥が深い。
- 固着して動かなかったり、奥まった場所で工具が届きにくかったり、供回りして緩められなかったり、特殊な形状のネジ山だったり等、多くの試練が待ち受けている。
- それらの問題を解決する知識は、マニュアル化されていることは少ない。
- 作業の中で自分自身が創意工夫したり、経験者から口頭でアドバイスしてもらい解決する類いのもの。
- そのマニュアル化されにくい、ちょっとしたコツのことを便宜的に「ノウハウ」と呼ぶことにしよう。
- 実はノウハウは重要な情報であり、ノウハウを知らずして目的は達成できないかもしれない。
- あるいは達成できたとしても、粗雑であり、低レベルな達成度合いにしかならない。
- ノウハウのない、この日記のような作業レベルは素人。
- ノウハウが蓄積され、的確・迅速に作業できる人がプロ。
- 自分はプロにはなれないが、数年後、十数年後に再びシングルレバー混合水栓の水漏れ修理する自分に、この日記を贈る。
果たしてその時、検索エンジンはこの日記をヒットしてくれるだろうか?
あるいは、さらに有効なノウハウを探し当ててくれるだろうか?
WEBはノウハウをマニュアル化できるのだろうか?
優れたUIかつオブジェクト
- シングルレバー混合水栓は、非常に優れたユーザーインターフェースを提供している。
- その取り扱いは幼児でも可能。
- すぐに学習して湯温の調整までするようになる。
- 内部は完全に隠蔽化されたオブジェクトである。
- 内部構造を全く知らなくても、外観のデザインのみで自在に操作できる。
- 内部の部品点数も少なくシンプル。
http://blog.livedoor.jp/kvk/archives/51639560.html
- 最も複雑と思われる、水と湯を混合する部分はカートリッジ化され、独立したオブジェクトとなっている。
- ちなみに、ネジ式の蛇口の構造はさらにシンプル。
- 水量をコントロールする部分は「ケレップ」と呼ばれる部品。(シングルレバー混合水栓の吐水カートリッジに該当する部分)
http://www.mizu-well.jp/construction/difference/