ドリルな気分で引き戸のレール交換
玄関からリビングへ通じる引き戸が、ぴったり閉まらなくなってきた。最後まで寄せても、手を離すと数センチ戻ってしまい、結構な隙間が空く。そのままでは冷暖房効率が著しく落ちるので、隙間を塞ぐスポンジテープを貼って、騙し騙し使ってきた。しかし、そのうちに今度は引き戸自体の動きが悪くなってきた。特定の場所から動かそうとする時だけ、めちゃくちゃ力を込めないと動かない。まるで筋トレしてるみたい。自分は筋トレは苦じゃないが、家の女子が文句を言い始める。わかった、何とかしてみよう。
原因
- 引き戸を外して、レールの状態を観察してみた。
- レールは木製、V字型である。
- よく見ると、長年の使用でかなり摩耗している。
- しかし、引き戸を閉めた時の先端から3cmぐらいはほとんど摩耗していない。
- 滑車の半径の分、レールと接地する位置が内側になるので、先端の3cmくらいは到達できないエリアになっている。だから摩耗していないのだ。
- 摩耗した部分は少しへこみ、摩耗していない先端3cmとの境界は斜面となる。
- それがぴったり閉まらなくなった原因のようだ。
- さらに、レールを外してみた。
- レールは接着剤のみで固定されている模様。ネジやフックの類いはない。
- そこで、ちょっと空いた隙間にすかさずマイナスドライバーを差し込み、
- もしかしたら折れるかもしれない、と覚悟を決めて力を込めると、バリッと溝からレールが剥がれた。
- 本当に折れたらかなりのショックだったと思うが、幸運にも折れなかった。
- なるほど、V字型の谷底は摩耗が進んで底が抜けていた。
- この底抜けの部分に引き戸の滑車がある状態で開け閉めしようとした時、ちょっとした筋トレになるようだ。
- レールを裏返してみたところ。摩耗の状態がよく分かる。
修理方法
- まず、同様の木製のレールを探してみたが、見つからない...。
- 10年以上経過しているので、同じものはないのかもしれない。
- ホームセンターに行ってみると、ステンレス製の引き戸レールが見つかった。
- 調べてみると、既存のレールを剥がして、溝の上に被せて使うものらしい。
- 同じ木製のレールだと、10年後くらいに再び摩耗によって同じ症状になることが予想される。
- ならば、ステンレス製のこのレールで良いのではないかと。
- レールの横幅は広がるけど、この寸法でたぶん大丈夫そう。
課題
このレールを取り付けるにあたっては、自分の中に二つの課題がある。
-
- 金属のカットと、
- ドリルの穴あけ。
- どちらも、ほとんど経験がない...。
ステンレスを切断する
- 一つ目が、既存のレールの長さに合わせて、ステンレスレールを切断する必要があること。
- 具体的には、1820mmのステンレスレールを、1620mmにする必要があるのだ。
- 果たして、ステンレスを綺麗にカットすることってできるのだろうか?(金属カットの経験がない)
- ホームセンターには木材のカットサービスはあるけど、「木材のみです!」って書いてある。
- 確認したら、ステンレスのカットサービスはないそうである。
- でも、カットする道具は貸してくれるらしい。(ヤッター)
- さっそく、その場所に行ってみると、でかいグラインダーが1つ、ドカンと置いてある。
- たぶん、すごい勢いで回転するんだけど、間違った操作をすると大怪我しそうである。
- 素直に、金切鋸を購入することにした。ステンレスカット用の鋸ブレードも購入した。
- 寸法を決めてさっそく鋸を引いてみると、金切鋸と言うだけある。何と普通に切れる!
- 数分でカット完了。切断面も、どちらをカットしたか区別できないほど、綺麗である。
- ステンレスカット用ブレード、恐るべし。
ちなみに、カットする前に注意することがある。
- 右側を切り落とすか、左側を切り落とすか、それによってレールのネジ穴の終端の位置が変わってくる。
- ネジ穴から終端までの長さが短い方がしっかり固定できると考え、寸法を測って決めた。
- 場合によっては、両端をカットする必要もあるかもしれないと思ったが、今回は片側カットだけで十分だった。
ドリルで穴をあける
- 二つ目が、ドリルによる穴あけである。
- フローリングの床材とその下地材に2cmくらいのネジをねじ込む必要があるのだ。
- 目立たないところで試してみたけど、ドリルでちゃんと穴お空けておかないと、とてもじゃないがネジが入って行かない...。
- ドリルは必須である。しかし、ドリルなんて持ってない...。実家へ借りに行った。
- 物置の奥をガソゴソ、すると年代物のドリルが見つかった!
- 電源に接続して、レバーを引くと回転する。
- 質実剛健な無駄のないドリルである。
- ところで、穴を空けるという行為自体は単純ながら、じゃあ正確な位置に真っ直ぐ綺麗に空けられるか?と考えてみると、ちょっと自信がない。
- ならば自信が持てるまで、練習するしかない。
- 誰だって、床に無惨な穴を増やしたくはない...。
- という訳で、不要な木片に×印を付けて、さっそく練習開始。
- ズボズボと、ドリルで穴を空けるのは楽しい。
- 何度か試しているうちにコツが分かってきた。
- 刃先を接触させてからドリルを回すと、位置がずれる。
- ドリルを回転させてから、両手で支えて、刃先のぶれを最小限に抑え、狙った位置に落としていく感触でやった。
- 同時に、何ミリ径の穴が最適なのか、いくつか径を換えながら試してみた。
- 結果は、2mmか2.5mmが良さそうだった。
迷い
- レールを仮止めしてみて、ネジ穴の位置の確認をした。
- ネジ穴の間隔が狭いので、既存のレールを取り付ける溝と被らないよう確認しておいた。(赤ポチがネジ穴の位置)
- ネジの長さが、溝の深さより十分長いので、それほど神経質にならなくても大丈夫かも。
- 穴を空けるときは、レールを仮止めして、レールの上からドリルで穴を空ける作戦である。
さあ、いよいよ穴空けだ!という時に、女子連中が帰ってきた。
- ドリルを見て、なに、これ、すごい、とか盛り上がっている。
- こっちはこれから失敗できない作業をしようとしているのに!集中できない。
- 「これから床に穴を空ける。失敗できない作業である。」ことを伝えると...
女子の一人から衝撃的な一言を聞かされてしまったのだ!
「両面テープで貼り付けちゃえば簡単なのに」
- ガーン、衝撃的な一言である。
- なるほど、両面テープで止めれば、確かに簡単である。
- ドリルは不要、必要なのはステンレスのカットのみだ。
- ホームセンターでレールのネジ穴と付属するネジを見て、すっかりドリルで穴を空けるしかないと思い込んでいた。
- 両面テープという、文明の利器の存在をすっかり忘れていた...。
- 「そうだよね、両面テープ使えば簡単だよね、」そう言いかけて、声が出ない。
- いや、自分はさっきまでドリルで穴を空けようとしていたんじゃないのか?
- その前に練習もしている。穴の位置も確認した。もはや失敗する要素は何もないはず。
- ならば、このまま穴を空けてしまえば、良いのではないか?
- そもそも女子連中があと30分遅く帰ってきたら、ドリルの穴空けは完了し、世界一スムーズな引き戸に歓声を上げていたはずである。
- ここまで穴空けの準備をして、両面テープに切り替える理由はあるのか?
- 様々な葛藤が頭の中をよぎる。
決行
- 「いや、このレールはネジ止め仕様だから、両面テープではすぐ剥がれてしまうかもしれない。」
- そんなあまり説得力のない理由をつけて、結局穴空けを決行したのだ。
- もう、ドリルな気分をリセットすることなんてできなかったのである。
果たして、ステンレスレールはしっかり固定されたのである!
- 仕上がりも十分綺麗。
- そして、引き戸は世界一滑らかに動くようになった。
- 過去の筋トレのイメージで開けてると、勢いあり過ぎて危険。
- ぴたりと閉まる快感。
所感
- 金切鋸を使えば、金属も綺麗に切断できる。
- ドリルを使う前に、両面テープで接着できないか、考えるべき。
- 今時の両面テープは、用途を選べばかなり高性能である。
- ネジだけでなく、両面テープも付属しているステンレスレールがあったらいいのに。
追記
- ドリルで穴をあける時、役立つ工具
- 滑車の高さを調整
- 以前よりレールの溝が浅くなったので、隙間風が気になった。
- 滑車の高さを下げて、レールに接しないギリギリの高さに調整することで、隙間風を最小限に抑えた。
- レール先端の溝を若干深くする
- レール先端は滑車が通過しないエリアなので、2、3日使っていると滑車が通過する部分の歪みで、閉じた後に数センチ開くようになってしまった。
- (V字レールの下は何もない空間(深さ数ミリの溝)なので、滑車が通過する部分のV字の谷が、ほんの少し深くなってしまった結果だと思う。)
- レール先端のV字が深くなるように、バール先端に紙を被せて、レール先端のV字に合わせて、ハンマーで優しく叩いた。
- V字の深さをうまく調整することで、レール先端に近づくと、自然に閉まる引き戸となった。ぴったり閉まるようになった。